2018年に公開された映画「万引き家族」のキャスト、評価、ネタバレなしの簡単なあらすじ、深堀りした考察をまとめました。
万引き家族の収入って毎月いくら? 主人公のおさむは日雇いで働いていますが日雇いってどんな世界?
あなたの知らない日雇いの世界、私も経験があるのでリアルな世界をお話しします。
Contents
「万引き家族」キャスト
キャスト
監督&脚本:是枝裕和(これえだひろかず)
主演:リリーフランキー
出演:安藤サクラ、樹木希林、松岡 茉優(まゆ)
また子役2人もかわいいので注目です。
賞
映画「万引き家族」は2018年のパルムドール賞を受賞しました。
ちなみに、カンヌ国際映画祭って時々聞くけど、カンヌってどこの国なの?発展途上国? 国の名前?なんで権威があるの?と疑問に思った方もいると思うのでここでカンヌ映画祭の復習をしておきましょう。
画像右側が日本で、左側のヨーロッパのフランスの海沿いにカンヌがあります。
「万引き家族」ネタバレなしのあらすじ
「万引き家族」は、タイトル通り万引きなどを行いながら生活をする血のつながらない6人家族の人間愛のお話です。
映画自体はコメディスタイルのため、万引きしながらの生活に思わず笑ってしまったり、ラストはどんでん返しもありま
この話の面白いところは、この6人はみな赤の他人同士だっていうことです。
この家のあるじは樹木希林演じる初枝。初枝が所有する東京のビルの間にある狭い日本家屋。
ここにリリーフランキー演じるおさむとその彼女の安藤サクラ演じる信代、息子役の祥太、妹役のリン、居候の松岡まゆ演じる亜紀の6人が住んでいます。
収入が足りないため、不足分を万引きなどで補って生活しています。
ある日息子の祥太が、自分のやっている万引きの生活について疑問を抱くようになり、家族のやっていたことが警察にばれて一家がバラバラになるまでを描いています。
「万引き家族」の家族構成&相関図
それでは「万引き家族」の家族構成&相関図を見てみましょう。
初枝さんと亜紀の関係
さきほど全員赤の他人6人と説明しましたが、唯一非常に広い意味での家族関係にあるともいえるのがおばあさんの初枝さんと亜紀です。
亜紀は、初枝が離婚した夫の新しい妻との間にできた一人息子の娘です。そのため初枝とは血縁関係にはありません。
亜紀は、金銭的には不安のない非常に恵まれた中流の上といった家庭ですが、父の新しい妻とその間の娘との関係からいずらくなり家出して初枝の元で暮らしています。
柴田治(おさむ)
リリーフランキー演じる治は建設業の日雇いで働いています。
どこか一か所の会社で毎日働くとかは向いていないようで、お金がないので働いていますが、お金があれば気が向かなければ休んでしまうような気ままな働き方をしていて甲斐性がないとされています。
信代
安藤サクラ演じる信代は、近所の工場でパートで働いていましたが、工場の経営が傾いたことから、長く働いていて時給が高いからという理由でリストラに遭います。
祥太(しょうた)
祥太は、パチンコ屋の車の中で拾われます。捜索願が出ていないことから、親が子供を探していないとも言えます。庭にある車の中を寝室にしています。
りん
りんちゃんは、万引き家族の一番新しいメンバーで、親に虐待されていたところをこの家族に救われます。
「万引き家族」気持ち悪い?を考察
「万引き家族」は、日本の貧困世帯で生きる人々の姿を描いています。しかし皆さんはどう感じたでしょうか。こんなの日本ではありえない、ファンタジーだよと感じた方もいるでしょう。気持ち悪いと感じてしまう方もいるようです。
理由としては万引きをすることへの不快感や、豊かな日本に住んでいることから貧困に対して気持ち悪いと感じる方もいるかもしれませんね。
また自分が経験したことがある貧困への危機感からリアリティがありすぎて気持ち悪いと感じてしまうのかもしれませんね。
家族の収入はいくら?
あくまで仮説ですが
ところで「万引き家族」の収入はいくらなのでしょうか?映画の中ではくわしくは明かされていませんが、映画の中の生活ぶりから勝手に想像してみました。
万引き家族の一番安定した収入があるのがおばぁさんの初枝さんの年金6万円です。
初枝さんの旦那さんが会社員で厚生年金だったのかは分かりませんが、かりにそうだったとしても離婚しているため、国民年金の期間が長くもらえる年金額は6万円だったようです。
ただ初枝さんは東京都心のビルの間に土地と家を持っていたことから家賃は発生しない点は恵まれているでしょう。
治は日雇いで働いていますが、屋外の仕事のため天候に左右されそうな点と、彼自身に毎日働くという気持ちが余りないため月160時間の内半分の100時間働いているとみなし、時給1,000円と仮定すると月10万円程度でしょうか。
信代さんもパートはしていますが、6人家族の料理などもしていると考えられフル勤務とは思えないため時給1,000円で月60時間で計算すると月6万円。初枝の年金と治の日雇い、信代のパート代合わせて約月22万円程度の収入ではないかと想像できます。
一家6人の食費、電気ガスなどの光熱費だけでも1人頭月3万円はかかるでしょう。6人で18万円。残り4万円でその他必要経費をはらい、足りない分を万引きして生活しています。
理想の収入
もちろん治と信代さんがフル勤務で働けば、非正規といえど全員で40万近くの収入になり、ギリギリかもしれないけど生活ができる気もします。
しかし映画の中を見る限り、治も信代さんもフル勤務では働いているとは思えないので、20万ちょいくらいなのではないかと想像します。
非正規労働者の世界
そもそも、治と信代がフル勤務で働けばいいじゃない?と思う人もいるかもしれませんね。
しかし私は、万引き家族は決して遠い世界の話や関係ない話とは思いません。私自身の経験からお話しします。
大企業時代
私は新卒時代、いわゆる東証一部上場企業に入社しました。そこには労働組合、年功序列、終身雇用という従来の日本の強みと言われる3種の神器と、定年後にもらえる厚生年金で守られた世界でした。
言い方を変えれば、法律違反を犯さない限り、仕事なんてやらなくてもできなくても一生の雇用保証とその後の年金が保証されていました。
非正規の世界
その後30代になってから会社員を辞めて、非正規で働く機会があったのですが、それは厳しい世界でした。
当時、派遣などの非正規での働き方は、いつでも辞められる、短時間勤務が可能など自由な働き方とCMなどで宣伝されていました。
しかし実態は、企業がいつでも自由に解雇できる働き方だったのです。
既存の正社員は労働組合や法律で雇用が守られているので、雇用調整の効く労働力が欲しかったという背景があったのです。
利益を上げられない企業では、労働者を全て非正規にしてごく少数の正社員が管理するという実態がそこにはあるのです。
非正規の給料
非正規労働者には派遣とパートがありますが、どれくらい給料をもらっているのかまとめました。
一般的に言って派遣の場合、給料がすごく安いってわけではアリマセン。派遣会社が中間マージンを3割程度取っていますが、都内一般事務の時給は1,500円程度、1ヵ月で24万くらいにはなります。
しかし問題は契約終了があることで、派遣切りなどで仕事を失ったときのための生活費を考えるとギリギリになってしまいます。
もちろん雇用保険を掛けているので失業の際は5~8割もらえるのですが、雇用保険をかけた期間が8か月以上必要になるので、どちらにしてもできるだけ貯金しておく必要があるのです。
直接雇用のパートだと、仮に時給が1,000円だとして1ヵ月で16万にしかならず税金など支払ったら12万円くらいで将来は見えないのではないでしょうか。
日雇い労働者の世界
映画の中で主人公の治が働いている日雇いの実態について深堀ってみましょう。
実はわたしも日雇いを3日ほど経験したことがあるんです。でも募集は日雇いという名前ではなくて単発バイトという明るい名前でした。日雇いと書いてあったらなんか怖そう、気持ち悪い感いっぱいのため絶対働かなかったと思いますね。
日雇いにもいろいろあると思いますが、私がやったのは倉庫の軽作業で、例えばAmazonなどでネットで発注したものをまとめたり箱詰めする仕事でした。
企業側から見た非正規
企業側の視点で見るならば、人件費削減のために非正規を使います。
利益を上げられない企業や、必要な人員に波がある企業などで非正規を大量に使っている実態がそこにはあるのです。
必要な時に必要なだけできるだけ安く人員を確保したいという企業側の要求と、毎日働くこと、毎日仕事を継続すること、毎日同じ人間関係の中で働くことがイヤだという労働者側の心理の需要と供給が合致して日雇い労働という現場が成り立っているように感じました。
私は労働組合に守られた安定した大企業で働いていたこともありますが、日雇いで働く人たちが決して問題があるわけではないし、能力が劣るわけでも、仕事ができない訳でも全くありません。
むしろ、日雇いで働いている人たちは労働社会に心理的に距離があると言った方がいいかもしれません。
学生バイトさん、20代の若い女性、主婦、中高年などさまざまな世代の人が働いていましたし20代の普通の女性が働いていることは驚きでしたね。
ネカフェに住むという人がいますがそれはこのような日雇い労働者の世界で働いている人に多いんです。その次はホームレスが待っているでしょうね。
治の人物像
そのような日雇い派遣の実態を含めて主人公の治の人物像を見てみましょう。
治は正当防衛にはなりましたが起訴された過去があります。しょうたを学校に行かせていなくても平然としている点から、知識をあまり重視しない傾向になるようです。
働くうえでの専門知識もありません。まぁただ専門知識がないのは大半の労働者がそうなのですが、何かを勉強して知識や資格を身に着けるという気持ちはありません。
働き方も、毎日働かず気が向いた時だけ最低限お金が欲しいというの価値観の持ち主です。
正当防衛の過去を除けば、それ以外の素質については特別問題があるわけではなく、あまり労働社会が合わない人ということができると思います。
セイフティーネットから漏れた人たち
「万引き家族」は、社会のセイフティーネットから漏れてしまった人々が、身を寄せ合って生きる姿を描いた作品です。
セイフティーネットとは以下3つになります。
- 家族
- 企業の雇用保証
- 公共機関の支援
家族
個人のセイフティーネットとなるのは家族かもしれません。しかし機能しない家族ということもよくあることです。
親は子供を大事にするはずだというのは、大半の家庭ではそうなのかもしれませんが一部の家庭ではそうではないのですから。
映画の中でも祥太はパチンコの駐車場にいたところを助けられたわけで、両親はおそらく捜索願も出していないでしょう。
りんもまた近所で虐待されていたのを助けられています。また松岡もまた中流の上くらいの家庭でありながら、血縁関係のない母親と妹との関係で家にいずらく家出をします。
企業の雇用保証
また私たちの労働者社会では誰もがどこかの企業で正社員として働くことで一生の金銭的補償を得ます。
しかし正社員で働かなかった場合、生涯の金銭的補償を得ることはできませんし、労働社会に心理的に距離がある人も世の中には隠れて多くいるのです。なんせ私自身も距離があるので人の子とは言えないからです。
公共機関の支援
また、最悪最後は国が助けてくれるというのがあり、実際は生活保護などのあるようです。
そもそも国の保護は、誰もがどこかの企業で正社員として保護を受けるという前提に成り立ち、そこから漏れた人たちの救済として生活保護があったのです。
そこに労働者としての保護が崩れた場合の救済機関として考えられていなかったという面があるでしょう。そもそもしょうたやりんをある意味誘拐しているために公共機関に頼ることができないという現実がありました。
映画の中では、6人が身を寄せ合ってそれぞれが自分のできることを提供して生活しています。初枝おばかさんは年金と住まいを、おさむは日雇いの稼ぎを、信代はパート代と家事を、祥太は治に教えてもらった万引きで家計を助けているのです。
現実の世界と期待
しかし現代の日本社会では、赤の他人同士が貧しい人同士、相談にのることはあったとしても、一緒に住んで苦楽を共にするというのはあり得ず、私たちは誰にも頼れず孤立していると言えます。だからこそ苦しいのですが。
私たち現実の日本は、苦しんでいる人が家族からも会社からも孤立して一人闘っているのではと思えるのです。
物語の最後は、祥太が万引きを辞めたいと思うことで一家に終止符が打たれます。
祥太がもう少し時間が経てば、自分の万引きの告発がきっかけで信代が5年の刑を受けたことを知るでしょう。
しかし祥太には、彼らの元に戻ってほしいそう思うのです。なんかバイトかなんかして、稼いでちゃんと生活費を払ってまたあのうちで元気に生活できたらそう思うのです。