2019年に公開された映画「パラサイト半地下の家族」は、外国語で制作された映画の中で初めてアカデミー作品賞を受賞した作品です。
「パラサイト半地下の家族」のキャスト、評価、ネタバレなしのあらすじ、考察をまとめました。
貧困の問題は韓国にある問題ではなく日本の方が下がっている現実があるのです・・・
Contents
「パラサイト半地下の家族」キャスト
キャスト
「パラサイト半地下の家族」の監督はポンジュノ、脚本はポンジュノとハンジンウォン、主演はソンガンホとなっています。
受賞
「パラサイト半地下の家族」は、2019年アカデミー賞を、作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞の4つを受賞した作品です。またカンヌ国際映画祭のパルムドール賞も受賞しました。
ところで、アメリカ以外の作品ってアカデミー賞の対象になるのでしょうか? これは韓国映画じゃないの?と思った方はいませんか?
調べたところ、ノミネート条件を満たせば可能です。
そういえば、日本の映画も各種部門でアカデミー賞にノミネートというニュースを聞くことがあると思います。ただ、主要部門ではないのでそれほど大きく取り上げられないというのがあったのでしょう。
ただしアカデミー作品賞は、条件を満たしノミネートされたとしても今まで英語以外の映画が受賞したことはありませんでした。「パラサイト半地下の家族」は韓国語の韓国映画で英語以外の作品で初めてアカデミー作品賞を受賞した作品となるのです。
そのため「パラサイト半地下の家族」は、韓国映画のため、今までのアカデミー作品受賞作品とは全く異なる雰囲気の映画といえるでしょう。
半地下とは
ところで、タイトルにある「半地下」とはどういう意味でしょうか? 半地下というと半分地下という意味で貧困なために半分地下のところにしか住めないという貧富の差を示しているのは分かりますが、そもそも半地下という住まいは存在しないですよね。
しかし現代の韓国では存在するのです。
時は南北朝鮮対立の時代にさかのぼります。そのころ北朝鮮の工作員のテロ攻撃を相次いだことから、新築の建物に対して地下室を義務付けたそうです。いわゆる昔の日本でいう防空壕の現代版みたいなものでしょうか。
その半地下を、住宅難の時代に安く貸し出すことになったんだそうです。一時的な逃げ場としての地下のため日当たりが悪く、風とおしも悪く、狭いといった感じだと想像できますね。
「パラサイト半地下の家族」ネタバレなしのあらすじ
評価
「パラサイト半地下の家族」のネタバレなしのあらすじをご紹介する前にいったいどんな作品なのかを、感動、楽しい、スリルの観点で評価してみました。
タイトルで家族と銘打っている通り、映画は家族について描かれています。裕福な4人家族と、貧しい4人家族と、もっと貧しいかもしれない家族。
激中は、ワクワクしたり、面白かったり、ちょっと笑えるシーンもあってコメディータッチになっていることろもあります。ラストは裕福な家族、貧しい家族が対立して事件に発展してゆくのです。
ネタバレなしのあらすじ
3つ目「パラサイト半地下の家族」あらすじを最初に簡単にまとめ、後に深堀ってみましょう。
パラサイト半地下は、一言でいうと韓国社会の貧富の差を描いた作品です。
高台に住む裕福な4人家族と、半地下に住む貧しい4人家族。もっと貧しいかもしれない地下に住む夫婦。3つの家族が登場します。
4人家族の息子が学歴をいつわって裕福な家の家庭教師として雇われます。
そして学歴や経歴を偽って、小さな子の家庭教師を妹へ、車の運転手を父おやへ、お手伝いさんを母親へ入れ替えていくのです。
こちらの画像は半地下の映画の宣伝のメイン画像になりますが、この中央は裕福な4人家族、囲む4人は後から入り込んでいった貧しい4人家族、裕福な4人家族は気が付かぬ間に経歴を詐称した貧しい4人家族に囲い込まれてしまったのです。
ある日、昔のお手伝いさんが忘れ物を取りに帰ってきます。その忘れものとはその家の地下に旦那さんを隠していたのでした。
お手伝いさんは、貧しい4人家族よりもっと貧しいかもしれない人たちだったのです。
悪事がばれてしまったため貧しい4人家族と、もっと貧しいかもしれない夫婦は批判し脅し合い、事件に発展していくのです。
「パラサイト半地下の家族」考察
それでは、この映画の内容をもっと深堀ってみましょう。この映画のテーマは2つではないかと思います。
・貧富の差
・虐げられた人々の怒り
映画を観て「あー韓国は貧富の差が社会問題になっていて大変だなあと感じた方は少数ではないかと思います。
もしにこの映画が20年くらい前の映画だったとしたら、貧富の差は韓国やどこかの発展途上国で起きている問題だと思ったでしょう。
しかし実は現在の日本人と韓国人では韓国人の方が裕福なのはご存じでしょうか、データを見て解説していきます。
GDPとは
このGDP国内総生産とは国民全体の生産額を表します。
ちなみにこの国内総生産いわゆるGDP、言葉は知っているけどどういう意味かよく分からない方が多いと思いますのでイラストを使って分かりやすくしますのでぜひきいてくださいね。
数式では、一人当たりの労働生産性×労働参加率×人数で計算されます。
労働生産性とは
労働生産性とは1人の労働者が生み出す付加価値のことで、例えば、材料費1万円に対して加工して5万円で売ったとしたら4万円の労働生産性となります。
労働参加率とは
労働参加率とは労働に参加している割合のことで、国民のうち半分が労働に参加していたら労働参加率は50%となります。
国内総生産GDPは国民全員の生産力を表してるため、国民の人数が大きいほど数値が大きくなので、国民一人当たりの生産額を表しているわけではありません。
中国が日本よりGDPが上だとしてもそれは国民の人数が14億以上いるからです。DGPの順位がいいからと言って国民一人当たりが豊かであるとは言えないのです。
韓国のGDPは、10数位です。日本よりは順位が低いですが、しかし国民の人数が日本の半分以下だからGDPが高くないだけで、実は一人当たりの給与は韓国は日本人を超えていることをご存じでしょうか?
GDPは3位だが・・・
まず国としての経済力を図る数値にGDPという数値が用いられるのはご存じでしょうか? GDPとは国内総生産のことで1位アメリカ、2位中国、3位が日本となっていました。
実はこのGDP日本は以前はアメリカに次いで2位だったのですが2010年から中国に負けてしまい3位になりました。
しかしこれもまた少し古いデータになります。
実は、3位の日本と4位のドイツ、5位のインドのGDPの差は小さいため、2023年のデータによると日本はドイツに抜かされて第4位に落ちる見通しです。
こうなればさらに順位を落としインドにも近い将来抜かれてしまうでしょう。
日本が経済大国だったのは、このようにGDPランキングが2位や3位だったからなのです。
現在4位のドイツや5位のインドを経済大国とみなすことはあまりないかと思いますのでGDPランキングが4位に落ちた暁には、というかもう落ちるのですが日本は経済大国と言われる国ではなくなってしまうということになるでしょう。
平均給与比較
こちらのグラフは、OECD世界経済協力機構と呼ばれる、ヨーロッパ諸国、日・米を含む38ヶ国の先進国が加盟する国際機関が発表した国別の平均給与を高い順に右から並べたグラフです。
赤い棒グラフが日本になります、グラフがちょっと見にくいので拡大して見ます。
棒グラフ左の赤い部分が日本、右側の黒い棒グラフが韓国になります。日本より韓国の方が平均給与が高いことを示しているんです。要は日本人は韓国人より平均給与が低くて貧乏なのです。
平均給与というけれど、物価が違うのではと思いますよね。でもこのデータは、物価水準を同じだとして給与水準を比較する、購買力調整を行った後のデータなのです。
ちなみに私は今から30年近くまえ高校時代に韓国に修学旅行に行っています。
当時の日本は、GDP世界第2位の国で、アジアでもトップの経済大国で他のアジアから憧れの国でもあったのです。日本がアメリカに憧れているのと似ていますね。
当時の韓国では日本のアニメやミュージシャンが人気でもあり、韓国人は経済的に日本に追いつきたいという強い願望を持っていたように感じます。
成長期にある国は、車のスピードが非常に速いとうのを聞いたことがあるでしょうか。
高速道路だったのか一般道路だったのか不明ですが、当時の韓国の道路はとにかく大量の通勤の車がもうスピードで競争し合っていて、車のスピードの速さに恐怖と驚きであっけにとられた記憶があるのです。
そのくらい30年前の韓国は日本みたいに豊かになりたいという気概にあふれていたのではないでしょうか?
あれから30年近くたつ中で、韓国が少しづつ豊かになり、日本はまだまだ大丈夫だと思っていたら個人当たりの平均給与は韓国の方が高くなり日本は韓国に追い抜かれてしまったのです。
映画のテーマである貧富の差は日本も同じ状況であり、GDPの順位が下がり続けているので、今後もどんどん状況は下がっていくようです。
殺人事件に発展する理由
映画では「裕福な4人家族」。半地下に住む「貧しい4人家族」。地下に住む「もっと貧しいかもしれない夫婦」の3組が登場します。
事件の元は?
事件に発展するのは、「貧しい4人家族」がもっと貧しいかもしれない夫婦の命を犠牲にしても自分たちの立場を守ろうとしたことから始まります。
結果的に、もっとまずしいかもしれない夫婦は貧しい4人家族の命を狙い、裕福な家族から存在を侮蔑されたと感じた貧しい4人家族は裕福な4人家族の命を狙ってしまうのです。
自尊心を踏みにじられて
この映画で描かれている貧富の差や、上の者が下の者を下に見る気持ちは、隠し立てなく話すなら実は誰もが感じたことがあるし、上の方の人から下に見るような態度を取られたという経験は多くの方があるのではないでしょうか。
例えばそれは、学歴だったり、所属する企業だったり、収入だったり、出世レベルだったりするのかもしれませんね。
私たちは映画を観ながら必ずや自分の人生の体験と重ね合わせ見ている自分に気が付くのです。
映画は、資本主義社会で生きる私たち個人個人が内心感じている競争社会やそれに伴う心理を描いているのです。虐げられたと感じた人々が殺人を犯すのは、自分にとって大切な家族や自尊心を傷つけられたときだったのでしょう。その怒りは自分を傷つけた相手だけではなく、社会に対する怒りを身近な相手にぶつけたのかもしれません。
怒りを爆発させた主人公に対して、誰もが他人事ではないと感じるのではないでしょうか?
外国語の映画で初めてアカデミー作品賞を受賞した「パラサイト半地下の家族」はu-nextで見ることができます。